コールセンターは価値の源泉になる

先見経済 「コールセンターは価値の源泉になる」

コールセンターは価値の源泉になる 『先見経済 

 企業は業務のどの過程で価値を生み出すのか。提供する製品やサービスで価値を生み出すのはもちろんだが、非効率な事務処理システムの革新、物流の合理化などで収益を生み出すのも、定常化した経営システムを革新するための注目ポイントだ。さらに、「コールセンター」や「IPコンタクトセンター」にも注目する必要がある。「ブロードバンド」のインフラと「顧客情報起動型経営」というコンセプトが、そのキーワードである。それはまた、サード・パーティー・メンテナンス(第三者保守=3PM)という新しい産業を創出しそうな気配である。

  「コールセンター」は現在、テレビショッピングや通信販売の有力な手段として巨大な産業に発展しようとしている。「IPコンタクトセンター」は、電話だけではなく、インターネットの電子メールやホームページなども利用する。ブロードバンドが普及すれば、テレビ電話も手軽に使えるので、映像利用の質の高いサービスが可能になってくる。

 特に、急速に長距離通信料金が低下するとともに、距離や利用時間に関係のない定額制のブロードバンドが利用できるようになって、通信コストが大幅に下がったために、「コールセンター」や「IPコンタクトセンター」が一気に普及した。沖縄や北海道などの賃金の安い遠隔地にセンターの設置が盛んだが、さらに中国やタイなどのアジアへとセンター設置が広がっている。

 また、顧客の声を直接に聞き、顧客満足度を高めるCRM(カスタマー・リレーションズ・マネージメント)の道具としても重要な役割を果たしつつある。
通信販売の手段としては、週刊誌や各種刊行物、あるいはカタログ、テレビなどで商品の宣伝をして、その注文を即座に電話で受けることから始まった。古くは再春館製薬所がテレビや雑誌を利用して基礎化粧品を販売して飛躍的に成長した例がある。カタログ販売でもセシール、ニッセンなど、新しい流通事業として成長した企業も、葉書、FAX経由だけでなく、コールセンターが飛躍の鍵を握ってきた。

 商品販売の注文を受けるだけでなく、高額品では一度サンプルを提供した後、一定期間を経て、メーカー側から消費者に電話をして注文を取りに行くケースも多い。さらに、不動産や金融商品、健康食品などの販売のために一方的に電話をする「電話セールス」もある。一部は社会問題化しているが、ビジネスとしては広範に広がっている。

 さらにテレビショッピングである。各局にショッピングのための番組が設けられるとともに、テレビショッピングの専門チャンネルもできている。テレビでは販売数を限定してリアルタイムに注文を受け付けて残量を表示する手法がとられ、「早い者勝ち」のゲーム性が購入者の意欲を刺激している。

 また、消費財メーカーの商品に対するクレームを受け付ける「消費者センター」もある。当初は「苦情処理」としてマイナスのイメージの強い部門だったが、しだいに、消費者の接点として、企業のイメージを向上させるためには重要な機能だということが認識されつつある。それだけでなく、消費者から寄せられる苦情の中には商品改良のヒント、場合によっては新商品開発のヒントも豊富に含まれている。「苦情」は、商品開発のヒントの「宝の山」である。消費者の声をデータベースに蓄積し、それを知識処理する、そのための重要な情報収集の窓口になる。

 さて、こうした中で新しい動きとして注目されるのが、メンテナンスのための「コールセンター」「IPコンタクトセンター」だ。ATM、自動販売機、パソコンなどのトラブルが生じると、メンテナンスのための「コールセンター」「コンタクトセンター」に連絡がくる。そのトラブルに対して、電話で状況を聞き、原因を絞り込んで、適切な技術者を現場に急行させる。

 ここでのポイントが電話のオペレーターの対応である。マニュアルに従って原因を絞り込む。これで適切な訓練をした技術者を派遣できるし、必要な部品や機材を携行して現場にゆくことができる。この精度が低いと、修理に時間がかかったり、部品が足りずに、再度、部品を取り寄せるなど、時間とコストの無駄が発生する。場合によっては利用企業の現場の人に操作をしてもらい、短時間で修復することもありうる。ブロードバンドを利用して、検査や修復の手順を映像やアニメーションで見せ、修復の手助けをするプログラムも拡充しつつある。

 こうしたコールセンターの作業の質の向上で、メンテナンスに急行する頻度を減らし、大幅にコストを下げることが可能になる。コールセンターの質の向上が、メンテナンス総コストを下げるのである。

 さらにコールセンター技術の向上でメンテナンス技術者の余力が出てきたため、この運用ノウハウを利用して他のメーカーのメンテナンス業務を引き受ける企業が出始めた。これがサード・パーティー・メンテナンス(3PM)である。マニュアルの充実で複数の機器についてのメンテナンスが可能になる。さらに外出している技術者も携帯電話の位置情報サービスを使って場所を確認して、最も近い人に現場急行の指示ができる。前回のメンテナンスを含めて機器の故障履歴、修理履歴をデータベースから携帯電話に呼び出して参照し、作業の手順がより的確に判断できるので、だれでも担当できる。この結果、「3PM」が効果的に実現できる。

 廃棄物のコスト負担が重くなり、機器は長期間、修理しながら使用するほうが合理的になってきた。メンテナンスが新しい価値を生む時代である。その需要を効果的にアウトソーシングで引き受けようという「3PM」。新たな市場の出現として、十分にウオッチする必要がある。「コールセンター」が生み出す新市場でもある。


先見経済』 2004年1月22日

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