「マイ・ポータル」がもたらすIT革命 『先見経済』
インターネットは強力な情報収集の道具だが、問題は、自分が欲しい情報に自分のほうから「アクセス」しに行かなければならない仕組みが多く、これが面倒なことだ。自分の欲しい情報だけが欲しいときにすっと画面に出てくれば最高なのだが。将来はそうなるにしても、これはまだ時間がかかりそうだ。その代わりに、とりあえず、予め設定しておいた情報だけを、自分専用の画面に表示してくれるサービスが次々に登場している。
「マイ・ポータル(自室の玄関口)」と呼ぶ考え方だ。こうしたサービスがIT革命の次のステージである。特に常時接続のブロードバンド時代に入ると、パソコンはネットワークにつなぎっ放しにしておける。その際、いつもネットワークへの入り口である「ポータル」が自分流に設定してあり、自分の求めている情報が次々と更新されて表示される。「情報漬け」になりすぎるという問題点は残るが、これがビジネスの現実である。
自宅でインターネットに接続するときや企業の中でイントラネットに接続する際に、最初に出てくる画面のことを正しくは「ホームページ」と呼ぶ。インターネットやイントラネットに接続するときに最初に出てくる画面はネットワークへの玄関口になるので「ポータル(玄関)」と呼んでいる。このポータルは、各企業もおおむね持っている。自社のホームページに入るための玄関口であるトップページである。企業の玄関のようなものだ。
これは不便である。企業の受付には担当の女性がいて、用件を言えば取り次いでくれるが、自分が行く場所は特定の部署だから最初から、そこだけに行けるように設定して起きたい。われわれが必要としているのは百貨店の受付や役場の受付ではない。「ポータル」はないよりもあったほうが良いが、これは不便なものである。
これに対して「マイ・ポータル」は、自室の玄関に、必要だと登録した相手の情報が随時届けてもらうシステムである。「ポータル」も「マイ」がつくのとつかないのでは大きな違いがある。
一般的なサービスとしては、検索エンジンサービスのヤフーが提供する「マイ・ヤフー」がある。インターネットを利用するときには、アクセスしたい企業や組織の名前をキーワードに検索するサービスにまずアクセスすることが多く、インターネットに入る玄関口(ポータル)に固定することが多い。また、そういう設定に誘うために、天気、ニュース、地図、旅行、レストラン・料理屋案内などジャンル別のメニューも豊富に並べて目的のサイトにアクセスしやすいにしている。「goo」、「MSN」などのライバルの検索サービスも同様のポータルメニューを準備している。
さらに、この豊富なメニューサービスを前進させたのが「マイ・ヤフー」である。ジャンル別のメニューの中から、自分の欲しい最新の情報の分野を指定しておくと、このポータル画面は、その最新の情報を表示する自分専用の設計になる。これが「マイ・ポータル」である。このマイ・ポータルのサービスがインターネットにアクセスする際にユーザーがまず表示する「ポータル」になろうと目指すサービス提供会社の今後の競争の一つになる。
この一般的なサービスは、趣味や関心などが共通な相手を全国から探し出し、その分野の仲間作りや情報収集には優れているが、取り扱うニュースは国内全般、世界全般などまだ、きめ細かさが不足している。通常に地域で生活している人にとって毎日の関心は地域のスーパーの安売り情報やごみ集めの情報、家族が熱を出したときに緊急に対応してくれる役立つ医療機関、子供の学校の今日の給食メニューなど、もっと具体的で狭い情報である。
こういう地域の情報を整備するには、地域の住民や行政、企業が自身で情報を作成し、提供する必要がある。そのリーダーシップを果たせるのは、市町村役場、区役所などの行政機関、あるいは地域に情報収集網を張り巡らす地元新聞社、CATVなどの放送局であろう。
行政では柏崎市役所が「マイ・ページ」と呼ぶこうした「住民マイ・ポータル」のサービスを提供している。知りたい行政情報を指定しておき、柏崎市のホームページにアクセスすると、ごみ収集や予防注射、年金、保険の手続きの情報、公共施設の予約状況など、欲しい情報が真っ先に表示されるという仕組みだ。ただし、新聞のニュースや近隣のスーパーの安売り情報などはまだ、連動していないので、進化が必要だろう。地域メディアのほうでは、まだ、こうした動きは見当たらない。
ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)の中には、「マイ・ポータル」への動きが見られる。3年ほど前から始まった「NC九州ドットコム」と、その全国への普及版である「NCにっぽんドットコム」は、ユーザー企業の社員や顧客にWEBメールのアドレスを発給するサービスを展開しているが、WEBメールを利用する際には指定のホームページにアクセスするので、そこを利用者の欲しい情報をまず表示する「マイ・ポータル」の性格を持たせている。
この仕組みは少し変わっている。同社のISPサービスのユーザー企業(会員企業)の従業員や顧客がメール使用者になるが、会員企業は総計で約50万人のメール利用者にプレミアム付きのアンケートを行ったり、商品やサービスの告知を行うことで、地域のビジネスの拡大に役立てる活動を始めている。ガソリンスタンド、自動車販売、医療機関、ビジネスホテル、特産食品など、地域密着でビジネス展開してきた企業にとっては、潜在顧客を発掘する格好のマーケティングツールとなる。
さらに最近では、魅力的なイベントにアクセスする際に通過するサイトを提供し、そのサイトのアクセス数を上げて広告的な効果を挙げる新しいビジネスモデルを構築した。新しい広告メディアとして注目されている。
インターネットは膨大な情報の渦だったが、それを自動的に選別し、それぞれのユーザーにとって意味のある情報に整理しなおす次のステップへと移行しつつあるようだ。
『先見経済』 2004年5月17日