ミニ・ムネオは、どこにでもいるのか

ミニ・ムネオは、どこにでもいるのか

『内田洋行inkSpot』 2002年3月19日
 
 ある地域で計画が進展中の農林水産省主管のネットワーク計画を取材して、驚いた。その計画はきわめて意欲的で、CATVを基盤にして、ある一部市街地を除外して、残りの地域全体を光ファイバー基盤のCATVを張り巡らせるというものである。もちろん、そのチャンネルの一部を利用して、高速インターネットサービスも行われることになっている。

 ところが、地域の担当者に内容を聞くと、実直な担当者は、「これは、農業利用目的で構築されるので、農家への農業情報の提供、あるいは行政からの情報提供に優先的に使われるので、そうしたコンテンツを当面は考える」という回答である。「地域のイントラネットとして、外部のインターネットとのアクセスは、当初は力点は置かない」という。

 ちょっと待ってください。これだけの高速ネットワークを敷設しながら、何故、インターネットへの出口がないのか。「決して、インターネットを考えていないわけではない。しかし、これは農林水産省の資金で行うので、あくまで農業目的が優先しなければ、まずい」という。「そうしないと、本来、ネットワークを管轄している総務省との関係がまずくなるのですよ」と苦労話を打ち明ける。

 これも、随分、住民を無視した話だ。日本は国を挙げて、高速インターネットを基盤にした高度な情報社会作りを目指している。そのために多額の税金を投じて、全国各地でネットワーク建設計画を推進しているはずだ。それなのに、せっかく構築するネットワークは所轄官庁の縄張り争いに遠慮して、目的を限定して使用する、という、信じられない話だ。

 地方を自動車で旅行していると、「農道」という名前の幅の広い道路に出くわす。並行して走っている国道などよりもずっと、スピードの出る立派な道路で、最初は空いているが、そのうちに地図にも掲載され、いつの間にか、市街地を避ける国道のバイパスとして重宝に利用されるようになっている。今では、農業従事者以外の人たちが農業に無関係な目的で利用するケースがほとんどだ。農家の人でさえ、トラクターで農作業に行くときだけに利用しているわけでもない。スーパーに買い物に行くときも、お医者さんに病気を見てもらうときにも、つまり、農業以外の目的で堂々と利用している生活道路である。

 本来は、農林水産省が農道として管理しているのがおかしいが、それはさておき、住民にとっては、国土交通省が建設しようが、農林水産省の資金で作られようが、便利なものができるなら、それで良い。これを国土交通省の資金で作るべきだ、とか、農林水産省の資金で作るのはおかしいというのは、縄張り争いに命をかけるそこかで喧嘩してもらえばよい。

 「農林水産省のおかげでできた」とか、「総務省の補助金でできた」などと、だれかが自分の金を配布する様な顔をするから、地方の善良な公務員までが誤解をする。「国のカネ」など、誤解するような呼び方をするからいけない。「国民の税金」ではないか。国民のお金で作るものだ。国民の税金を自分のカネと錯覚する「ミニ・ムネオ」はどこにでもいる。この国のネットワーク化もまだ道のりは遠い。


内田洋行 『inkSpot』 2002年3月19日

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