日本経済、危機は乗り切った

日本経済、危機は乗り切った

内田洋行『inkSpot』 2002年4月2日 

 少し楽観論を述べるようだが、日本経済はどうやら危機一髪で最悪の渕から脱出しつつあるように見える。さしもの半導体不況が底を打ち、収益構造が明確に見通せるようになったことが一つ。ユニクロの成長に限界が見えたように、デフレのスパイラルにも歯止めが掛かってきたのが一つ。ついにマクドナルドまで、半額セールを終了した。そして、頼みの米国経済がV字で回復軌道に乗りつつあることが三番目の明るいニュースだ。

 半導体不況の脱出は、これは在庫循環での山あり、谷ありなのだが、この間に日本の半導体産業はリスク回避のために生産の統合や開発の共同化などの手を打った。これで山も大きくない代わりに今後は谷も深くはならないだろう。景気の過熱を防ぎ、かつ、循環的に訪れる危機も緩和されるだろう。

 二番目のデフレスパイラルからの脱出は、日本人の心に余裕が戻って来たのが原因だろう。先行きの不安から、消費を縮こまらせていたのが、あまり、現実を深刻に考えなくなり始めている。もちろん、人によって差はあるが、総じて言えば、デフレマインドが弱まってきた。その最大の功労は「政治」の世界のどたばた劇だろう。今年に入ってからのマキコ、ムネオ、ツジモトなどのスーパースターの活躍で、人々は現実逃避の活劇を楽しむことができた。また、政治の無策で狂牛病の不安が広がり、安売りの元凶だった、ファーストフード業界に安売りの余力がなくなったのも大きい。

 最後の米国景気を早期に立ち直らせたきっかけは同時多発テロである。同時多発テロの前は、米国景気は下降局面にあり、これが長期化しそうな気配だった。この打開には「戦争しかない」などと愚痴をこぼす経済アナリストもいた。そこへ不幸な事件が起き、景気は短期間で一直線にどん底に落ち、大胆な景気刺激策と戦争による特需が重なった。巨大な米国市場の活気が戻れば、日本の産業界にも目標ができる。

 後は、各企業ごとに再び芽を吹きつつあるビシネスチャンスをどのように捕まえるか、経営の問題である。生きるか死ぬか、明日をも見えない状況に慣れてしまったので、うっかりすると、このチャンスの芽を見逃すかもしれない。別の意味で、要注意の時期にさしかかってきた。


内田洋行 『inkSpot』 2002年4月2日

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