シャッター街の嘆きと地方景気の暗雲

シャッター街の嘆きと地方景気の暗雲

内田洋行『inkSpot』 2002年4月15日

 日本全体の総平均をとれば、どうやら、景気の底は近い、という感触だが、それは業種によって、地域によって大きなバラツキがある。「依然として、業績はずるずると底なし沼に引きずり込まれている」と感じられる業種や地域は、構造的に淘汰される運命にある、と覚悟したほうが良いかもしれない。今までのものを捨てて、もう一度、「一から出直す」という悲壮な決意が必要だ。

 日本各地を歩き回ってみると、あちこちに「シャッター街」とあだ名される商店街がある。昼間なのに、商店街にはほとんど人通りがない寂しさ。夕方6時になるとほとんどの店がシャッターを下ろしてしまい、灯火の消えた、シャッターばかりが目立つ商店街になる。昼間なら店が開いているかと思えば、昼間でも半分以上の店がシャッターを下ろしている。地域経済の疲弊は急速である。

 地元の商工関係者に聞くと、郊外に大きなスーパーができて客を取られた、と分析していたが、そうではあるまい。商店街が魅力ある店作りをしていないので、客を取られただけであろう。客を取ったと言うその大型スーパーですら、すでに業績悪化から、いつ店を閉じるか、という騒ぎなのに、そのスーパーにすら敗れた、というのが真相だろう。

 もっと深刻なのは、ネオン街の寂れ方である。夜になれば輝くはずの飲食街も同様に人通りがめっきり減った。

 ある地方都市では、夜の8時に歩いても100軒の店のうち、せいぜい10軒しか店の電気がついていない。それも全国チェーンの地方支店だったりするので、地元の飲食街はほとんど全滅ではないか、と慄然とさせられる。バーやクラブ、小料理屋など30軒もの店名が表の看板に並んでいる雑居ビルは、全館、真っ暗であった。

 工場が衰退し、農業も水産業もかつてのにぎわいではない。歓楽街に繰り出す客がいないのである。かといって、観光客を誘致するような努力もしていない。JRの本数はどんどん減り、少子化のせいで、学生の数まで減っている。おまけに地方財政難や公務員倫理規定法の施行でお役人さんの財布も期待できなくなった。

 これまでの地方振興策とやらが全く効き目がないのである。シャッター街は、このままではシャッター都市につながる危険がある。その恐怖感を地域の為政者たちは自覚しているのか。町の中で最も立派で目立つ建物は市役所と商工会議所のビルだった。地域の振興は道遠し。濃い暗雲がたなびき、景気回復には時間が掛かりそうだ。


内田洋行 『inkSpot』 2002年4月15日

これまでの掲載

中島情報文化研究所 > 執筆記録 > 内田洋行 奇論・暴論 > シャッター街の嘆きと地方景気の暗雲