「政府のCIO」必要論・不可能論か

「政府のCIO」必要論・不可能論か

内田洋行『inkSpot』 2002年7月28日

 日経新聞で連載した「システム障害ーー経営を変える」の最終回で面白い指摘があった。政府は各省庁ごとにシステムの充実に取り組むが、ここにきて、「政府のシステム全体を見る最高情報責任者(CIO)を置くべきだとの声がようやく上がってきた」というのである。うーん、考え込んでしまう。日本には、「IT担当大臣」がいたはずである。せっかく、大臣を置いたのに、仏を作って、魂入れず、の構図だ。いくらCIOを作っても、これでは同じである。

 クイズ、IT担当大臣はだれでしょう。
 答え、竹中平蔵経済財政政策担当大臣の兼務である。

 初代は、堺屋太一経済企画庁長官(当時)の兼務だった。日本もIT立国を目指そうという意気込みである。IT戦略本部を作り、日本全体のIT化はもちろんん、行政内部のネットワークによる業務革新全般を担当した。その後、額賀福四郎経済財政大臣(当時)にバトンタッチし、不祥事で短期間で辞任した後、後任の麻生太郎経済財政大臣(当時)に移った後、麻生大臣が自民党総裁選に立候補して辞任した後、竹中大臣が担当になった。いずれも兼務である。

 ところが、竹中大臣には、残念ながら、その自覚はない。現状は名目だけの担当である。現に、日本のIT戦略の重要案件である住民基本台帳ネットワークの問題に、竹中大臣はちっとも出てこないではないか。

 仮に、政府のCIOの組織を作っても、実効を持たせるには、相当の工夫が必要だ。現に組織的には存在するのに、機能していないのだから、その原因を解明しておかなければなるまい。

 最も大きなポイントは、適切な人材がいないことだ。ITに見識がある民間人を起用したら、失敗する。堺屋長官、竹中大臣ともに、残念ながら、大臣として、官僚に対してほとんど指示・命令の権力を持っていない。民間人から大臣になっても、人事権をほとんど持っていないからだ。その事情は外務省の人事権は田中真紀子になく、族議員だった鈴木宗夫代議士にあったことをみれば明らかだ。通りすがりのように来て、また、去ってゆく民間人の大臣は、大臣の間だけ、面従腹背していればよい。実際のところ、まじめに聞く耳は持っていない。官僚は人事権をもっている人ともに行動する。

 かと言って、人事権を握っている族議員がいるかと言えば、まだ、この分野には族議員が育っておらず、各省の族議員が跋扈することになるから、組織としてCIOを作っても、ほとんど、全体を調整する機能は発揮できない。

 では、どうすれば良いか。んんんん、、、頭を抱えるばかりだ。

 やはり、政府には頼らず、自己責任で防衛しながら、民間は民間でわが道を行くほか無いか。


内田洋行 『inkSpot』 2002年7月28日

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