内田洋行 『inkSpot』 2002年11月25日
「依然として日本の製造業は強みをもち、これを再編成すれば再生できる」「製造業の中心は中国に移り、日本、韓国、ベトナムなどは中国を中心にした衛星国の位置に収まった」--。
先週、横浜で開かれたシステムハウス協会のシンポジウムで、日本の製造業の実力について興味のある議論があった。パネル討論のメンバーはNECソリューションカンパニーの執行役員常務である海東泰氏、ソニーEMCS取締役常務田谷善宏氏、スタンフォード日本センター理事上席研究員安延申氏の3人。司会は筆者が担当した。テーマは「モノづくり立国は再生できるか」。その結論は、日本を代表する2つのグローバル企業で正反対である。
海東氏の主張は、現状を精緻に分析した上で、製造現場に携わる労働者の賃金、賃金が上がらないようにする制度、海外からの資本流入の仕組み、どの面からもすでに中国の製造業は主導権を握ったとする。NECが大胆に製造業の中国シフトを進めるのも、極めて合理的な決断である。すでに国家としてみた場合、日本は中国の属国である。
これに対して田谷氏の主張も説得力をもつものだった。製造業は「設計」「資材調達」「製造・組み立て」「物流」「販売・保守」という5つのプロセスから成り立っているが、現在、最も価値の高いのは最上流の「設計」と最下流の「販売・保守」に偏っていて、次に価値高いのが「資材調達」と「物流」、最も価値が低いのが真ん中の「製造・組み立て」である。製造業どこで収益を出すかといえば「設計」と「販売・保守」で、この部分は最も先端的な市場、つまり日本市場に接近していなければならない。つまり、製造業の最も重要な部分を中国に持ってゆくことはあり得ない、というのである。
それなら、価値の低い製造や組み立ては中国に持って行っても良いように思うが、田谷氏ははっきり否定する。製造プロセス全体の中ですでに小さな部分になっているものなら、日本において、最上流や最下流と一体となって運用できる場所のほうが合理的だ、というのである。つまり、設計で勝負し、販売・保守で勝負するような商品なら、日本製造業は再生できる、というのである。
この田谷氏の主張は耳が痛い。中国に製造拠点が移動したというのは、つまり、日本の製造業の創造性が枯渇して、設計で勝負できなくなったことを意味している、ということだ。中国シフトを嘆く前に、もっと創造性の高い商品を考えだせ、ということらしい。いつも欧米をみてヒントを探していたビジネスセンスを根本から見直さなければならない。脱帽。
内田洋行 『inkSpot』 2002年11月25日