21世紀をどう生き抜くか ~何に挑戦するのか

21世紀をどう生き抜くか ~何に挑戦するのか

内田洋行 『inkSpot』  2002年12月9日

 12月初めに沖縄・宮古島で開催された「ECOバカンス2002サミット」に参加してきて、大きなショックを受けた。大阪出身で地元に根付いて18年というダイビング指導員、猪澤也寸志さんが地元、平良市や全国の有志を動かして開催した会議だが、21世紀とは何か、という根源的な問題を突きつけられた。工業社会に取り残された宮古島が、21世紀は、工業化に取り残されたがゆえに残っていた自然をバネに、世界に生き方を問いかけようというのである。

 「ECOバカンス」という言葉自体が猪澤さんの造語だが、そこに大きなビジョンが込められている。森や湖沼、海などの自然環境の維持や回復を目的にした観光旅行は「ECOツーリズム」と呼ばれ、自然環境破壊型の「マス・ツーリズム」への反省として一部で注目されているが、旅行通過型の「ツーリズム」に対して、じっくりと腰を落ち着けて自然と向き合い、自然環境を改善する行為を付加する滞在型の観光を「ECOバカンス」と名づけてブランドとしようとしている。

 言うまでもなく、宮古島の自然のうち、最大のものは珊瑚である。この珊瑚が、流れ着く空き缶やビニール、ごみ類、さらに乱暴な観光客などによって破壊が進んでいる。オノヒトデも珊瑚を侵食する。こうした破壊からいかに珊瑚を守るか。

 特に議論になったのは旧暦3月3日の大潮のときにすぐ近くの海域に浮上する巨大な珊瑚礁「八重干潮(『やえびし』あるいは『やびじ』)」の問題である。近年、大型のフェリー船で観光客を運び、浮かび上がった珊瑚礁の上に観光客を運ぶのだが、これが、貴重な珊瑚を踏み潰す結果になる。数百年かけて育った珊瑚が無残に破壊される例が出てきた。観光業者の中にはこれを目玉にしているので、観光か、自然保護かの問題が浮上してきた。 こうした現状を打開するのが、インターネットだ、というのが、このサミットのテーマだ。サミットでは『百年大計ECOバカンス宣言――観光客が来れば来るほど美しくなる宮古島』を宣言(案)として採択した。(案)が取れなかったのは、参加した宮古島の幹部職員が、「百年とは大げさだ」と反対したので、折衷案として、後日、市の総意を確認するとして、残りの参加者全員で宣言を採択したものである。

 参加メンバーが「百年」にこだわったのは、珊瑚は数百年を経て現在の姿があるので、珊瑚を守る闘いは「百年」単位である、ということである。さらに、ブロードバンドを使って、珊瑚の現状をデジタルカメラで記録にとどめ、世界に公表する仕組みを作ろうというのである。地元に来る観光客が、ダイビングを楽しむついでに、カメラ撮影を行い、撮影者の名前とともに、インターネットに恒久的に記録する。経時的変化を専門の生態学者に提供して、必要があれば、保護策を提言してもらう。

 宮古島の有志たちは、百年かけて、この珊瑚礁を守るために挑戦しようというのである。企業の寿命は30年というが、それでは、いかにもさびしい。ブロードバンドを基盤にして次の世代も巻き込んで継続的に行う何か、挑戦するテーマはないか。せめて、こうした宮古島の珊瑚プロジェクトにでも参加してもらいたい。予算もなく、パソコンもカメラも、みな、手弁当である。しかし、その心意気だけは「百年」。壮大ではないか。

内田洋行 『inkSpot』 2002年12月9日

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