内田洋行 『inkSpot』 奇論・暴論 2003年6月30日
地方自治体に文化人が食い込んで、多額の企画制作費をもらって地方にはあまり需要のない音楽会を開いているそうだ。最近、話題になっているのは、宮城県白石市である。人口4万人強、年間の一般会計予算が140億円程度の地方の小都市に総工費80億円の豪華な音楽ホールがあるが、ここに年間6~7千万円の予算をかけて10回程度のコンサートを開催している。それも著名な音楽家が音楽監督を務め、その経営する中央のイベント企画会社に「丸投げ」する方法でずさんに運営されている。地方に音楽文化を育てるというのは、確かに大切なことである。しかし、問題は、だからといって、経費を惜しみなくつぎ込んで良いのか、ということだ。
地方に道路を作ること、文教施設を作ることは重要なことである。しかし、だからといって、投資をいくらでも行ってよい、というわけではない。そこに食い込んで、必要な経費以上のコストを請求し、地方財政を食い物にしたのが「建設ゼネコン」であるとすれば、宮城県白石市に食い込んで多額の経費を請求する企画会社は「文化ゼネコン」と呼ばれてもしかたがあるまい。
翻って、IT業界を省みて、財政厳しい地方の都市に食い込んで、必要以上の経費を支出させるような愚を犯してはいないか。「電子自治体」「e-JAPAN」と、「IT」と名前が付けば、予算の審査が甘くなりがちな風潮が広がっている。うっかりすると、不要なITシステムを大量に地方自治体が導入することになりかねない。自重すべきは、これに便乗して、過剰なシステムを自治体に売り込みすぎないことである。
ブームの最中には気がつかないが、自治体のシステムが定着し、冷静にシステムの評価ができるようになれば、システム投資や経費について、説明を要求されるようになる。これまでの行政支出に比べて、今後の支出は監査が手厳しくなる。少ない財政を一握りの集団が独占的に使ってゆき、「自治体はもうかる」などという幻想を振りまいた時代はすでに終わろうとしている。うっかりこうした受注に走れば、後に、「ITゼネコン」のそしりを受けることになりかねない。適正なシステムを適正なコストで構築してゆく。「IT立国=日本」を速やかに作り上げるためにも、少ない資金を効果的に使う仕組みを考えなければならない。
内田洋行 『inkSpot』 奇論・暴論 2003年6月30日