韓国の優位はいつまで続くのか

韓国の優位はいつまで続くのか

内田洋行 『inkSpot』 奇論・暴論 2003年12月8日

 先月、羽田-金浦空港の直行便が運航される直前に、2泊3日の駆け足で、ソウルのソフトウエア関連企業をいくつか回ってきた。ADSLがいち早く普及しただけに、これを利用したソフトウエアのアイデアは一日の長を感じた。特に映像を利用したアプリケーションである。テレビ会議、テレビ電話の中継サービスのASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)ビジネスなどは質が高い。日本の同様のサービスに比べると画像処理がきれいに仕上がっている上、自動的に記録ができるなど、ずいぶん、先行しているな、と感じさせた。料金も格段に安い。

 しかし、夜の会食などで打ち解けて話し出すと、不安要素はいくつか生じている。最も気になっているのが家賃の高さだ。人口の4分の1がソウル周辺に集中しているために交通渋滞は激しく、オフィスの近くに住宅需要も集中する。一定程度の生活空間を確保しようとすると、実質的な負担は給料の半分程度になりかねない。勢い、夫婦共働きで収入を確保しなければならない。その上、過当な受験戦争で教育費が高騰している。将来は、日本と同様の少子化問題に直撃されるのは間違いない。

 住宅の高騰は、日本の15年前を思い出させる。騰貴である。不動産の売買で巨利を得る人が出てきた。貧富の格差が広がっている。日本のバブルがはじけ飛んで経済が壊滅的な打撃を受けたのは土地取引に対する極端な規制で、歴史に汚点を残す経済失政だった。この先行の覆轍を見ているので、同じ失敗を繰り返すとは思わないが、貧富の格差は経済構造のひずみを現しているので、いずれ別の形で反動がきて経済の破綻を招く危険がある。サラリーマンが会社を辞めて不動産売買ビジネスで大もうけしている、などという話を聞くと、すでにマネーゲームが終末に近づいているようにも思える。こういう賭博経済の破綻が健全な産業の足も引っ張ってしまうのは日本で実証済みだ。

 それにしてもほっとするのは、地下鉄、タクシーなどの公共輸送機関の料金が安いこと。さらにどこに行っても、街中の庶民の食事は安くできることだ。日本の2倍、3倍の食事をして、料金は日本の3分の1から4分の1程度である。この付近が、貧富の格差がストレスを極大化しない安全弁かもしれない。東京から2時間以上かけて成田空港へ、通関を経て空路、仁川(インチョン)空港へ。そこから2時間かけてソウルへ、というのは一日がかりだった。それが11月末に羽田空港―金浦空港が開通したので、移動は半日で済むようになったようだ。日本-韓国の距離は再び近くなった。韓国産業の実力を評価しつつ、また、韓国のバブル崩壊も警戒しつつ、微妙な距離でのパートナーシップ作りが必要だ。

内田洋行 『inkSpot』 奇論・暴論 2003年12月8日

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