「ミートホープ」を根絶する方法

「ミートホープ」を根絶する方法

 ミンチの牛肉には豚肉や鶏肉、羊の肉、かも肉、その他、さまざまな肉のミンチが「増量食材」として混ぜ込まれていたらしい。中国製のペットフードの食材に増量材として有毒物質が混ぜ込まれたことに比べると、何となく、罪は軽いかもしれない気がするが、本質的には同種の「犯罪」である。食材には人によって生命にかかわるアレルギー反応を引き起こす可能性もあるので、正確に表示してもらわなければ、安全、安心の根幹が崩壊する。その根幹を、うっかりミスではなく、確信犯として、しかも長期間、企業ぐるみで実行してきたのだから怒りはなかなか収まらない。


 こうした確信犯の犯罪を防ぐには、かねて主張しているように、プロセスの透明性を高めることが重要で、情報技術を駆使したトレイサビリティシステムの導入がその具体的な方策だ。少し飛躍するが、食材を含めたコンピューターデータを公的機関で管理することにすれば、意図的に食材表示の偽装を行うと、「電磁的記録の不実記載」に問うことができるのではないか。現行法では最大で懲役5年程度の刑事罰があるはずだ。現在の食品表示の虚偽の摘発では、偽装で得られる利益に比して罰則が軽く、事の重大性を考えれば、もっと大きな懲罰を科すべきである。


 かつて、日本初のBSE肉が確認された際、多くの畜肉業界関係者の抵抗を押し切って、牛肉のトレイサビリティシステムが構築された。トレイサビリティシステム導入に反対した畜肉業界の主張は「膨大な手間とコストがかかるが、その負担は結局、牛肉の価格に上乗せされて消費者にしわ寄せされる」というものだったが、実際に実施されると、「コストアップになって迷惑」という声は聞かれず、明らかになったのは「産地表示の偽装」だった。松阪牛や神戸牛などの高級ブランド牛の多くに、その条件を満たしていないものがみられた。一部の畜肉業界が反対した本当の理由は、こうした実態が露呈するのを恐れたものだったのか、と当時、指摘されたものである。


 今回のミートホープの実態は、畜肉加工業界の例外中の例外であってほしいと願うが、類似の行為が他にもあるのではないか、と不安視する声も少なくない。こうした事態を根絶するためにも、トレイサビリティシステムの徹底と、関連法案の整備が急務であろう。


 食の安全への消費者の願いは深刻である。

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