イージス艦と漁船衝突

イージス艦と漁船衝突

 10年以上前になるが、コンテナ貨物船に乗って夜間、東京を出発、東京湾を通って横須賀沖から太平洋に出る経験をした。東京湾は前も後ろも右も左も他の船の明かりで大混雑だった。もちろん、大型貨物船、大型観光クルーザー、屋形船、漁船、釣り船と多種多様だった。波が大きくなり、太平洋に出た後も、前と後ろには点々と一列に貨物船が航行しているのが見えた。コンテナ船は翌朝、静岡県の清水港に到着、取材で同乗したわれわれ記者団は下船したが、東京湾内はもちろん、太平洋上まで、海の上の航行ルートが思いがけない大混雑であるのを見て、よく衝突しないものだ、と驚きを禁じえなかった。

 われわれが乗船した大型のコンテナ船は、かつては数百人の船員を必要としていたかもしれないが、自動化、機械化によって合理化が進み、その当時でもすでにたった22人で運航していた。現在ではさらに少なくなっていると思う。船員のほとんどはインドネシア、ベトナム、フィリピン人で、日本の船員は船長以下4人ということだった。操縦は自動ではなく、操舵を操っていたと記憶するが、それは東京湾内だけで、洋上に出れば自動だったかもしれない。少なくとも艦橋に立って衝突回避のためにウォッチしている船員がそれほどいたとは思えない。それでも危険には遭遇しなかった。

 それから10年ははるかに超えた年月が経過した、われわれの日常生活にはナビゲーションシステムが浸透し、自動車や携帯で位置情報が正確に特定できる。自動車では衝突を防ぐ回避システムの開発が進行中だ。空中を飛ぶ飛行機には衝突回避システムがすでに搭載されている。今回のイージス艦の事故のニュースを聞いて、行方不明になられている漁船員の方々の一刻も早い発見を望むとともに、船舶分野の自動化のレベルの現状にも驚かされた。自動衝突回避システムは装備されていないのか。飛行機や自動車に比べれば抵抗の多い水の上を進む船は回避行動も機動的には行えないのかもしれないが、最新鋭の電子システムを装備したイージス艦でさえこの程度か。
 
 それにしても、この状況では、「自衛」に不安を覚える。危機管理は最悪の事態を想定しなければならないので、少し極端な想定をするが、仮にゲリラが自爆テロの船舶を仕掛けてきても、とても防ぎきれないのではないか。船舶航行への情報装備率をもっと高める努力が必要なのではないか。10年以上も前のあの深夜の東京湾の混雑を思い出しながらその思いを強くする。

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