石油価格の高騰がもたらすもの

石油価格の高騰がもたらすもの

 原油価格の高騰に歯止めがかからない。目安となるWTIの価格は1バーレル=130ドルを突破し、100ドルを超えたときに大騒ぎしたことが昔のことのように思える。日本の原油調達は長期契約で、WTIの水準がそのままのしかかるわけではないが、この水準が続けばいずれは長期契約の価格も高値に吸い寄せられることになる。いや、この高値でなくても、60ドルや70ドルの水準でもダメージは大きい。ただし、見方を変えると、これは産業界の体質転換を図る好機である。

 1970年代の石油ショック時期に原油価格が30ドルの水準になったときに、世界各地で一斉に代替エネルギーの開発の機運が盛り上がった。風力発電、燃料電池、太陽熱、太陽光、地熱、バイオマス、潮力、海水温度差など、さまざまなアイデアが持ち出され、一部は実用化された。しかし、その後、原油価格が20ドルを割るような水準に低下したため、全体的に代替エネルギー開発の機運が衰えたように見える。その状況を再び一転させたのが100ドルを超える原油高騰である。今はチャンスである。

 70年代、自然エネルギーは原油高騰が35ドルを超えなければ実用的でないと言われた。ところがどうだ。あっという間に35ドルを超えるどころか、あれよあれよという間に130ドルである。代替エネルギーの採算性が著しく向上した。ただ、原油価格の高騰は相場をいじる人為的なものであるとすると、また、戦略的にいつ暴落してしまうかもしれない。そうなれば、代替エネルギーへの投資が一瞬にして無になる懸念もある。慎重論があるのは分かる。

 今回の代替エネルギーへの産業界の傾斜は、しかしながら、思い切って加速すべきである。いわずと知れた化石燃料による炭酸ガス排出量削減である。代替エネルギーの推進は地球温暖化を抑止するために必須の事柄である。これまでは石油火力や石炭火力などを抑制するために炭素税などを議論してきたが、コストアップになって企業体力を弱めるとして産業界から強い抵抗があった。もはや、そのような抵抗は存在しない。原油高騰ですでにコストアップである。代替エネルギーへの傾斜は、企業のコストダウンのためにも必須になった。

 原油高騰がなくても、情報産業界では、大量の熱を発生するサーバーを冷やすための電力を節約するために、サーバーを地中深くに設置し、あるいは、冷たい滝の水を冷却に利用するなどの方策を試みてきた。今後は自然エネルギーを利用することも積極的に検討すべきだろう。原油高騰はエコロジーへと産業界を推し進める最大のチャンスである。

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