オバマ次期大統領と米国経済支配の変貌

オバマ次期大統領と米国経済支配の変貌

米大統領選でのオバマ氏の圧倒的勝利は世界の経済構造の大きな変化を予兆させる。石油会社の経営者だった現ブッシュ大統領には、その政策に一部の経済グループに有利な偏った意図が隠されているのではないか、という疑念がつきまとった。イラン、イラク政策には原油価格の高騰を誘って石油関係グループに利益を誘導する意図が隠されているのではないか、と勘繰られてきた。

この点、こうしたグループとは無縁に思えるオバマ氏は、貧富の格差拡大を当然視してきた「市場の暴走」に対して従来とは別の価値観を提示するに違いない。時あたかも、金融危機対策に集まった各国首脳が「米国一極集中」の経済体系の時代は終わったとして、ポスト「パックス・アメリカーナ(米国支配下の平和)」の仕組みを議論し始めた。ブッシュ政権ではこれを容認しなかっただろう。オバマ政権なら、これを受け入れるかもしれない。おそらくオバマ政権は当分、米国内の経済立て直しに集中せざるを得ないので、国際経済支配にかかずらわっている暇はないだろう。

もう一つ気になるのは、市場原理主義とITとが結びついて生まれた「金融工学」の運命である。金融工学のもつ、「リスク回避」の役割は、その一部は今回の金融危機には解決策にならなかった――どころか、リスク回避を商品化した「デリバティブ金融商品」の破綻によって、かえって危機を加速させる機能を果たしたかに見える。「金融工学」についての疑問は、リスク回避の機能は良いとして、結果として「収益最大化」を目指している点である。どこかで利益が出れば、どこかで損をしている人がある。ある人を収益最大化するのは、部分最適であって、社会の成員の多くを幸福にする全体最適とは必ずしも両立しない。むしろ、現実を見ると、少数の「勝ち組」と多数の「負け組」を生み出した。全体最適の観点からすると、最大多数の最大幸福を目指してきた近代社会の目標とは明確に反対方向を目指した。

ITは道具であるので、金融工学が一部の「勝ち組」の目標に奉仕したのと同時に、「貧富の格差」拡大に奉仕をしたと非難されても仕方がない。しかし、道具である以上、最大多数の最大幸福に奉仕する手段としてコンピューターや通信が力を発揮することができる。最大多数の最大幸福を目指した新しい経済秩序を構築するためのITの活用法をこれからは意図しなければならないだろう。今回の金融危機を通じて、社会の価値観は大きく変わることになるだろう。ITの活用法も元の正道に戻さなければなるまい。

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