セレブの首相はいつまで続くか

セレブの首相はいつまで続くか

この国の首相の「迷走」がマスコミの紙面、バラエティ番組の電波をにぎわしている。「迷走」というが、一面からみれば確かに方向感がなく見えるが、別の角度からみれば、この首相の行動は10月以降、一貫している。「選挙管理内閣」として、「早期解散」の任務を負って自民党総裁から首相に就任したこの首相は、その座についたとたんに別の風景が見えてきた。いや、もしかするとそれ以前から見えていたのを隠していたのかもしれない。

その風景とは、「首相とは気持ちよいものだ」という「セレブ」の贅沢である。首相になってみれば、どこに行くにも多数のSPに守られ、パトロールカーが先導し、行く手を切り開いてくれる。無人の野を行くように首相の専用車は道路を突っ走る。漫画というか、劇画、コミックファンのこの首相には、こういう遇され方は天にも昇るほどの絶頂感を味わわせてくれるものだろう。海外での会議も恍惚感の極致である。専用ジェット機を準備され、相手国に行けば最高の儀礼で迎えてくれる。「首相をやって良かった」と心の底から震える喜びを実感しているに違いない。

国民が失業に怯えている? 年金が危うい? 国家財政が破綻に窮している? 多くの企業が倒産の危機に直面している? 「ふーん、それは大変だね。何とか、ならないのかね。じっくり適切な対策を、皆さんで考えてくれ。皆さんがやってくれると僕は確信しているから、頑張ってくれ。僕は海外の首脳との会議が忙しく、そういうことには構っていられないので」。

このままでは自民党が次の選挙で大敗する? それじゃあ、今、解散しないほうが良いだろう。このまま、僕が首相をやるよ。今解散すれば、僕のこのセレブな生活は終わってしまうではないか。解散はできるだけ延ばして、そう任期いっぱいやればよいだろう。こんな景気が悪いときに、選挙などやっている暇はないだろう。僕は国際会議が忙しいので、国内はいろいろ皆に考えてもらって、「それでは、国際会議に行って来るからね、行ってきます」。

要するに国民が共通に期待しているような「政治」をやるつもりはないようだ。首相の任務放棄である。笑顔で対応してくれる海外の首脳と会っている限りは世の中幸せいっぱいである。うれしくて仕方がない。好きな行事に参加しているだけで「首相の仕事をしている」と勘違いしている。

この国はそんな首相がのんきにセレブを楽しんでいる余裕がある国か? うーん、何とかしてくれ。これが、心ある人びとの本音と言えば、言い過ぎになるだろうか。

これまでの掲載

中島情報文化研究所 > 執筆記録 > 内田洋行 奇論・暴論 > セレブの首相はいつまで続くか