世界中が一様に経済危機に陥っているわけではないようだ。経済が国境を越えてグローバル化した現代、どの地域も同様の深刻度合いに違いない、というのは筆者の浅学による錯覚だったようだ。
現在の金融危機は、欧米には深刻な打撃が与えられたが、相対的にアジアは深刻度が少ないようだ。1月末に沖縄県名護市で開かれた第一回「アジア金融フォーラムin沖縄」での議論である。日興シティホールディング・ダグラス・ピーターソン会長、アジア開発銀行のロハーニ副総裁らアジアの金融機関のトップや東京証券取引所グループの斉藤惇社長、佐藤隆文金融庁長官、玉木林太郎財務省国際局長、沼波正日本銀行国際局長ら日本の金融分野のトップが参加した会議だった。
スピーチしたアジア金融機関のトップの一致した見解は、米国主導で進んできた世界の金融市場は当分、回復せず、この回復をリードできるのはアジアの金融市場だという点である。「アジアフォーラム」なので、多少、バイアスがかかっている気はするが、それにしても異口同音に「97、98年のIMF危機の深刻さに比べれば、アジアの市場は抵抗力も付き、米国発の危機の大津波を相対的に傷浅く受け止めた」と指摘していたのには驚いた。傷が深い欧米の金融市場に代わってアジアの金融が早く立ち直って、世界の金融を復活させる責任がある、という主張が続く。
もちろん、金融危機に端を発する欧米の消費の冷え込みで、輸出を主力とするアジアの大メーカーも大きな打撃を受けているが、それを補うには巨大なアジアの消費市場を活性化して「アジア内需」を顕在化させることである。そのためにはアジアの中で金融を循環させること、貧困を追放するための投資を効果的に行って、購買力を底上げすること、アジアの潜在成長力を今回の経済危機から脱出する復元力にすること、など、元気の出る提案が次々と繰り広げられた。
この復元力を引き出すための重要な道具がITであることは言を待たない。クラウドコンピューティング、SOA、顧客接近のためのコンタクトセンターなどの新しい技術はアジアの経済不振を打開する強力な支援の武器になるだろう。
まったく同感である。欧米の経済危機に精神的に巻き込まれてしまうのは豊富な情報が欧米から発信され過ぎているからかもしれない。日本は日本の現状をしっかり見据えて、欧米から切り離されたアジアの復元力に乗って、この閉塞状況を打開すべきではないか。そのためには日本産業界で蓄積した情報通信技術をフルに動員してアジアの復元力を増強しなければならない。