政府関係機関が国民から集めたお金で建設した施設が、時期を経ると、安い価格で民間に払い下げられる。その落札情報はあまり目に触れないが、ごく稀に、おかしな取引として疑問符をつけられながら、週刊誌に掲載されることがある。時には怪しげな海外企業もあるし、日本の有力企業の名前もしばしば記事の中に取り上げられる。問題はその際に、数億円、数十億円をかけた施設が数万円ないし、数十万円、時には数千円で落札企業に引き渡されることである。
国民から集めた大金で作られた施設が、100分の1以下という信じられない価格で第三者に売り渡されるのである。どうにも割り切れない。そうしたニュースに接する度に、何かおかしい、と感じるのは、筆者のような元ジャーナリストだけではあるまい。それでいて、手続きは適正になされたとして、誰一人、責任を取らないのである。これでは「やり得」ではないか。もちろん、土地売却にからんだ企業や人物は儲け、施設を建設した建設会社や資材の納入会社には損失を記録したのに相応する大金が流れて大儲けしたはずだ。
今回の鳩山総務大臣が問題を投げかけた後、いろいろなことが分かった。「かんぽの宿」をまとめて売却する理由は「このまま所有し続ければ損失が増大する」ということである。いずれ、売却してしまおうと最初から考えた人がいたとすれば、できるだけ高いコストで建設して償却負担が大きいほど、コストに見合う収入は達成できずに、「大きな損失」という結果を招くことになる。安く叩き売るときの受け皿会社と示し合わせていれば、とにかくできるだけ豪勢に建設することである。
最初は豪勢に建設するのは、そこに群がる事業者を儲けさせるのが目的かと思っていたが、どっこい、多額の損失を理由に安く叩き売るためにも、豪勢に作る必要があったのである。これは、国民から集めたお金を、施設の建設と売却を通じて、一部の関係者で貪り、分け合っている構図である。こんな国民をなめた事業が白昼堂々と行われ、「手続きは適正だった」と合法性を主張されてきたわけだ。ここで怒らなくて、どこで怒るというのだ。この構図が「かんぽの宿」の正面突破の前に立ちはだかった鳩山総務相のおかげではっきりと見え透いてしまった。
筆者は、こうした不正を浮き彫りにするのはコンピューターに全ての決定の記録を電子メールで残し、必要な時に直ちに検索して点検する仕組みを作ることだという主張を繰り返してきた。今回の不正の構造を徹底的に洗い出した後、それを防止するビジネスプロセス、ビジネスモニタリングの仕組みを早急に作るべきだ。コンピューターシステムはその程度の不正はトレイスし、焙り出せる能力を十分に持っている。
SOX法(金融商品取引法)の次は行政の不正を焙り出す内部統制の仕組み作りである。