先月、3月末の情報産業界の最大の話題は、IBMがサン・マイクロシステムズ買収交渉に入ったというニュースだった。15年ほど前、筆者が経済記者として米国でIBMやサン、マイクロソフトなどの経営陣にインタビューしていたころは、大型コンピューター全盛の時代が終焉を迎え、パソコンがコンピューターの主役の座を奪いつつあった。程なく、インターネットが登場し、そのパソコンが占めた主役の座もインターネットと関連した新しい企業群が奪い取る勢いを見せた。そのインターネット普及の原動力となった代表的企業がサン・マイクロシステムズだった。いずれはサンがコンピューター社会の主役の座を占めるのではないか、と予測させた時期もあった。
ところが、一時は「巨象は死んだ」のかと思われたIBMは、大胆に経営者を外部から招いて粘り強く生き残り、かつては新興勢力として主役の座を狙ったサンを、今日、逆に買収する動きに乗り出すという、意外な結末を迎えた。どこでシナリオは書き換えられたのか。
サンは今日に花開いた数々の新しい考え方を情報産業に持ち込んだ。技術を開放するオープン思想、その思想を同じくするインターネット推進のエンジン役、JAVAの提供など、際立った活動をしてきた。ネットワークそのものがコンピューターである、という主張など、その後、実現した数々のビジョンを提供してくれている。
両社の交渉は必ずしも順調に進んでいるわけではなく、買収が成功するかどうかはまだ予断を許さないが、それにしてもIBMの底力には驚きである。サンもまだ、余力を残しているように見えるので、その反発力もまた見ものである。
一方、インターネット時代の進行につれて、産業界の興亡も一段と激しくなっている。現在はグーグルやアマゾンが次の主役を担うだろうと見られている。一時は覇者となったマイクロソフトに代わり、次の時代はグーグルやアマゾンが主役になるというように認識が変わってしまった。もちろん、マイクロソフトもまだ、舞台の中央にいるので、今後、IBM並みの粘りを見せて相変わらずリーダー企業群の一角を占め続ける可能性もあるが、これまでのような「一人勝ち」の状況は消えるだろう。
クラウドコンピューティングやSaaSが情報産業の関心を集め、次々と新しいサービス、新しい企業も登場する。IBMのサン・マイクロシステムズ買収交渉のニュースはいろいろなことを考えるきっかけを与えてくれる。