1週間ほど前の5月中旬、東京で「沖縄IT津梁(しんりょう)パーク企業誘致セミナー」に参加した。「IT津梁パーク」は、アジア地域のIT産業の中心となることを目標にした沖縄県の産業団地で、この6月に第一号棟が完成し、入居が始まる。筆者が検討委員会の座長を務めて計画を固めた経緯があって、同セミナーでもパネル討論の司会役を仰せつかった。このパネル討論で「目から鱗」の様々な知見を得て、アジアの新しいIT産業の構造が見えてきたような気がする。驚きだった。
パネリストは株式会社沖縄ソフトウェアセンターの南郷辰洋代表取締役社長、株式会社レキサスの比屋根隆代表取締役の沖縄を代表するソフト企業の事業展開の説明、沖縄にBCM(事業継続経営)のための施設を設けて急成長している株式会社外為どっとコムの大畑敏久社長の沖縄進出の経験を聞いたあと、中国成都に本拠を置き、沖縄への進出を計画している成都ウィナーソフト有限公司の周密総裁兼最高経営責任者(CEO)が発言した。3人のパネリストの話題も興味深かったが、定員150人を遥かに超える聴衆で埋まった会場がどよめいたのは周総裁のいくつかのキーワードだった。
中国企業が、なぜ沖縄進出なのか?
もちろん、中国と日本の中間にあって、その「橋渡し役」としての沖縄である。これは、「津梁」の目的そのものである。沖縄はアジアのIT産業の「津梁(海を越える巨大な橋)」になろうという決意をもって「IT津梁パーク」の構想をまとめたのである。しかし、産業構造の進展は急である。周総裁は「今や、中国はIT輸出国ではなく、IT輸入国になろうとしている」と指摘し、「日本の優れた情報システムを輸入する需要が中国では大きくなっている」として、その輸入中継基地の役割を沖縄に期待する、という。
かつて、中国は石油輸出国だった。ところが経済発展とともにエネルギーの需要が拡大し、今や石油輸入大国で、その需要拡大が国際原油価格高騰の一因になっているくらいである。それと同様に、経済発展に伴うITの国内需要の拡大に、中国自身のIT供給が間に合わなくなっている、ということなのか。すでに日本にノウハウがあるならば、それを輸入しよう、日本に適切なIT資源があるならば、それも利用しようという、新しい構図が浮かび上がってきている。もちろん、中国にあるIT資源は日本の産業界も活用するが、逆に日本のIT資源も中国に輸出しなければならない。IT産業にとって、中国は単純な競争相手ではない。相互に補完し合う新しい関係を築く時期にきた。
上海のIT開発コストはすでに上昇し、沖縄での開発コストと同水準になっているという。それならば、沖縄でそのIT資源を活用して、日本との橋渡しの拠点にしようという新しい発想が生まれたようだ。アジアとのIT共生の道が見えてきたような気がする。