今度の衆議院選挙は、事実上の任期切れ選挙で、首相の「解散」による選挙とはとても言えない。任期切れわずか10日前の選挙で、任期切れ選挙と全く変わらない。そこで、この10か月ほどもやもやした疑問がはっきり解ける。なぜ、麻生首相は解散にこだわったのか。麻生首相は解散を先延ばしに延ばしてきた。
「タイミングを計っていて決断ができなかった」(小雨で雨宿りしていて飛び出すタイミングを見計らっているうちに豪雨になってしまった「雨宿り解散」というのだそうだ)という解説もあるが、そうではないだろう。「解散と選挙のためだけの超短期政権」と言われて、解散したら、もう首相になる可能性は小さい。元々、勝ち目がないから選挙用に首相の座が廻ってきたのである。となれば、ここは首相の椅子を任期いっぱい、楽しむにしくはない。この10カ月、本人は解散のチャンスなど元々うかがっていなかったのだ。タイミングをうかがっているふりをしながら、実は、許される限り長い期間、「首相」を楽しみたかったのである。できたら任期いっぱい。
首相に就いてみると、漢字が読めないだけでなく、国際情勢も、景気も、友党である公明党の選挙事情もまったく読めない、政治家としての能力の不足している人であることが国民にもよく分かった。これほど国民に尊敬されない首相も宇野首相以来であろう。よくまあ、針のむしろに耐えられるものだと思うが、首相にはそんな世間の目などどうでもよくて、本人の気持ちは、「アキバ派」の麻生首相にちなんで言えば、「コスプレ」を楽しみたかったのではないか。首相という衣装、首相という決定権、外国に行って首相という立場の歓待のされ方、各種の行事にホスト役で出て、首相として挨拶をしたり、表彰状を手渡す栄誉など、そういうことを楽しみたかったのである。経済を回復すること、国民生活を立て直すことなど、それは誰かの責任で、関心はない。
その「コスプレ首相」の仕上げは、「解散宣言」である。これこそ首相であることを実感できる最大の楽しみである。その楽しみを妨害されようとしたのだから、これは本当に怒った。どんなに都議選の結果の責任を問われても、自民党が衆議院選で大敗しようと、「解散宣言」をかっこよく行う陶酔感には代えられない。
コスプレ首相に振り回された10 か月だった。だれが首相になっても、これより悪くなることはあるまい。それほどの悪名である。もし、首相としてかっこよいことを一つでも残したければ、インターネットで映像情報を流す「ユーチューブ」を使って選挙演説をする新方式の選挙でも提案したらどうか。さすが「アキバ派」。最新技術をよく理解していたのだな、と、ここのところだけでも後世に名声を残せるのではないか。