広島市の秋葉忠利市長と長崎市の田上富久市長が、「2020年のオリンピックを広島、長崎の共催で招致したい」として「オリンピック招致検討委員会」を共同で設置すると発表したのには驚いた。2020年のオリンピック開催の都市の選定は4年後の2013年に行われる。2016年の五輪開催に敗れた東京が再立候補するかどうかは不分明だが、広島・長崎の立候補の表明は関係者には大きなショックだろう。
もちろん、広島・長崎の立候補の目的は核兵器廃絶のアピールである。今年、就任早々のオバマ米国大統領は、核兵器を実戦で使った唯一の国の大統領として「責任がある」として、2020年を目標に核廃絶を訴えた。最も多くの核兵器を抱える核大国が、突然、核廃絶を宣言したので、その衝撃はまさに「核爆発級」だった。オバマ大統領は早くもノーベル賞授賞が決まった。広島・長崎はこの核廃絶の大きな運動の節目となる2020年に「祝賀のイベント」として五輪を招致しようというのである。もちろん、立候補したということだけで、核廃絶運動に新しい話題を投げかけ、世界の人々に核廃絶を考える機会を広げられるだろうという思惑もあるだろう。
核廃絶運動の推進者にとっては素晴らしい着想である。
しかし、核兵器を信奉する人々もなお多いし、核兵器を歓迎するわけではないが、強い反対論者でもない、という層も国際的には分厚いだろう。そういう人たちは、核廃絶運動のような「政治問題」を五輪に持ち込まれることにアレルギー反応を引き起こす懸念もある。「そもそも五輪に政治的問題を持ち込むことができるのか」というわけである。
核廃絶運動の人々には「核廃絶運動は人類の悲願であって、政治問題に矮小化されてはいけない」という思いがあるだろうが、世界の常識はそうはゆかない。その主張だけで五輪都市選考の場で戦えるかどうか。
ただ、世界には短期間で常識を覆すことに成功した運動もある。その道具となったのはインターネットだった。いうまでもなく、米国大統領選挙でのオバマである。インターネットを使った小口の献金の集積も新しい時代の出現を印象付けた。16年の開催地の選考は終わったばかりだ。次の選考まで、4年近くもある。五輪招致運動が核廃絶の運動の輪を広げることになる。五輪招致が実現しなくても、世界の核廃絶への認識を変える運動ができれば成功だ。世論に対しては、「核兵器」以上の威力をもつインターネットをどしどし活用してもらいたいものである。