「過剰機能」の反省――「7」好調にみる教訓

「過剰機能」の反省――「7」好調にみる教訓

ウィンドウズ7の売れ行きが好調のようだ。発売数日後、マイクロソフトの樋口泰行社長とあるパーティーで出くわしたところ、「予想を上回る勢いだ」となかなかのご機嫌の様子だった。調査機関の調べでも、前回のOS「Vista」発売時に比べて3倍から4倍の販売本数だという。もっとも、金額では1.8倍程度と、販売本数ほどの伸びではないが、グーグルの「クラウドコンピューティング」攻勢にあって、勢いが落ちているように見えたマイクロソフトの久々の元気復活である。

その理由についてはすでに周知の通りなので多くを語る必要はないが、一言、「Vistaは機能を詰め込み過ぎた」と言えば十分だろう。

情報通信分野は技術革新の速度が速いので、技術者は、気負って、最新技術を盛り込んで過剰機能を提供しがちである。ユーザー側のニーズを追い越して、提供者側の自己満足に終わるケースも少なくない。ビデオ機器やテレビ受像機も、冷蔵庫や洗濯機も、さらに家庭用の電話機や携帯電話も、機能が多すぎて使いこなせない。

これを反省して、ボタンの数を減らして単純機能に絞った電話機が人気を呼んだのも記憶に新しい。家電製品や電話機も、市場が急成長しているアジア地域に行くと、高機能の製品には人気がなく、単純機能で、もちろん価格の安い製品が圧倒的に多い。高機能を使いこなせる人はほとんどなく、基本機能さえ満たしていればそれで十分なのである。高機能を要求するのは、ほんの一部のマニアックな人たちだけなのである。

パソコンの機能が高度化するのも、比較的マニアックなユーザーの層が分厚いからだった。しかし、パソコンのユーザー層が拡大するにつれて、ユーザーの中心は一般ユーザーへと移ってきた。マニアックなユーザーの声は少数派になってしまった。技術革新のスピードにユーザーが追いつけないのではない。最先端の技術革新のスピードには関心が薄い層にまで、ユーザー層が拡大してしまったのである。市場の巨大化とともに、ユーザーの性格が変わったのである。市場の変化、ビジネスの変化に気がつかなければ、需要と供給のミスマッチで巨大な損失を招きかねない。「Vista」の不人気と「7」の好調はそうした教訓を我々に与えてくれる。

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