オフショア開発を超えて――ソフトウェア産業の多様な可能性

オフショア開発を超えて――ソフトウェア産業の多様な可能性

日本のソフトウェア産業の将来をめぐって、新しい方向性の模索が続いている。その中で、従来のソフトウェア開発とは全く別の手法であるPEXAやGeneXusなどが日経コンピュータ誌などに紹介され、注目されている。開発のプロセスが大幅に簡素化されて、開発期間が圧縮される。同時に作業工数の激減によってコストも大幅に軽減されるのである。情報システムを利用する側ではSaaSやクラウドコンピューティングが重要なキーワードになったが、そのソフト開発の側では別の潮流が勢いを増しているようだ。

ここでは個々のソフト開発手法については詳述しないが、これまで伏流として流れてきた開発手法が着実に実績を重ね、とうとう「普及」の目前まで到達した、と言えるような気がする。日本のソフト産業の道が一本道ではなく、多様な可能性があることを示すものである。それぞれ注目し、研究していただきたい。

背景にあるのは日本のソフト産業の行き詰まりである。実際、ここ10年、日本のソフト産業は漂流してきた。今から振り返ってみると、混乱の原因となったのは、「オフショア開発」というキーワードではないか。日本の主要ソフトウェア企業が、中国やインドなどの新興国にソフトウェアをオフショア開発する道をとり、「コスト競争」に走ったことだ。しかし、よく考えると、これは1990年代に米国産業界が不況脱出のための経費圧縮の対策として打ち出したものだった。そのころの中国やインドは明らかに米国の高い賃金と比べれば、10分の1以下の、はるかに低い賃金で、優秀な技術者を雇うことができた。

しかし、その後、15年で中国もインドも経済的発展を遂げた。特に中国だ。中国のGDPはすでに今年、日本と肩を並べて、年率10%近い高成長であっという間に日本を引き離してゆくだろう。その過程で賃金は高騰し、かつての米国-インドのような賃金差は日本-中国の間には存在しない。人民元が強まれば、中国の技術者の賃金の方が高くなる。低賃金を求めて「中国を下請けに使う」などという「上から目線」のビジネスモデルは急速に陳腐化しているのである。

情報システムを効果的に利用することはあらゆる産業の競争力の源泉である。安いコストで、しかも短期間で、情報システムを構築し、企業経営者が求めるビジネスモデルの実現を支援する。中国オフショア開発は、そのうちのコストダウンだけの手段だった。しかし、そのコストダウンの効果は限界がみえてきた。開発期間の短縮の面では、中国オフショア開発はむしろ厄介な壁だった。こう見てくると、オフショア開発は転換点にきている。とはいえ、単純な国内回帰は不可能である。PEXAやGeneXusなどは氷山の一角かもしれない。こうした背景から、水面下から浮上する手法がまだまだ続くかもしれない。

単なるコストダウンではなく、開発プロセスの全面的な見直しから、日本のソフトウェア産業の再生が期待できるのではないか。

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