「世界一を目指す高性能スーパーコンピューターを開発する意味が理解できない」――「仕分け」の対象になったことで、いろいろ議論を呼んだ来年度予算のスーパーコンピューター開発計画だが、結果として、①「次世代スパコンの開発・整備に 209億3900万円」②「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティングに必要な研究開発18億4000万円」の二つのプロジェクトとして復活していた。新聞報道などではほとんど見かけないので、筆者は不明にして知らなかったが、先日、文部科学副大臣の鈴木寛参議院議員から聞いて初めて気が付いた。
新聞は、廃止されたものを面白おかしく報道するが、復活にはあまり興味を示さないことがある。特に予算の問題を取り扱う政治部や経済部の記者にとっては、スーパーコンピューターの話題は技術的な議論で難しいので、「世界一である必要がない」という言葉にだけ反応したのである。復活した時は、さらに高度な技術的内容が付加されていたので、どっと大量の予算内容の発表をこなすのに忙しい中で、時間を割き、理解して記事を書く記者はほとんどいなかった、ということだ。
逆転復活は単に、スーパーコンピューター開発予算を復活したのではない。国関係の研究機関、大学などには、およそ20台のスーパーコンピューターがあるのだそうだが、それぞれが独立して限られた研究者だけがこれを使っている。使用する目的も、医薬品の開発や遺伝子構造、宇宙開発、構造物の計算など、まちまちだが、そのまちまちのところで当然のように閉鎖的に使っている。文部科学省といっても、大学は文部行政、研究機関は科学技術行政で連携なく利用されている。さらに研究機関は厚生労働省や国土交通省など、管轄している省庁もばらばらなのだそうだ。
これまでの霞が関行政では省庁を越えて、連携の話はあり得ない。ところがインターネットの発展、グリッド技術の発展で、システム連携してはるかに高度に利用できる可能性が出てきている。省庁の壁の存在で、当初予算案の時には全く、考慮されていなかった。霞が関の内部事情でできている壁を突破するのが「政治の役割」である。文部科学副大臣という立場ながら、通産省時代には情報処理振興課、電子政策課で、日本の情報産業政策を担当してきた鈴木寛議員としては、日本の情報技術の危機、というばかりではなく、医療研究、物理研究、化学研究、宇宙研究など、最先端の研究分野にとって行き詰まりを招く危険がある、と急遽、本人の担当分野を越えて動き出した。厚生労働、科学技術、情報技術など、多方面の専門家を急遽招聘して検討チームを結成、5日間で、ネットワーク連携によって既存のスーパーコンピューターをさらに高度に利用できる新しい環境を作るための予算18億円を提案、そのネットワークにつながる次世代スーパーコンピューターを開発する予算も復活させた、ということだそうだ。
省庁ばらばらの縦割り行政で視野狭窄に陥っていたコンピューター開発分野に、「仕分け」は新しい視点を導入するきっかけとなった。日本のスーパーコンピューター開発だけでなく、研究開発プロジェクトに新しい視点を提示してくれたようである。