あなたの会社に「朝青龍」はいないか――「心技体」の管理責任

あなたの会社に「朝青龍」はいないか――「心技体」の管理責任

横綱・朝青龍が、また、暴行事件問題で土俵際に立たされている。不祥事は、今回で5回目だそうだ。最初はけがで巡業を休み、モンゴルに帰国、療養するはずだったのが、なんと、サッカーをして遊んでいる風景を映像に撮られて放送されてしまったのだから、なんとも言い訳ができない。「心技体」を理想とする横綱の自覚を求めて、2場所休場という厳しい処分も下ったが、復帰後、優勝回数をさらに増やしているのだから、勘違いを増長させてしまった。スポーツは勝つことだけが目的ではない。アマチュアはもちろん、野球やサッカーなどのプロスポーツでも、事件を起こせば、協会から出場停止は当然のこと、引退を余儀なくされることもある。

国技である大相撲は、ことさらに、礼に厳しい。横綱ともなれば、強いことはもちろん、勝ち方にも美しさが求められる。土俵上はもちろん、日常生活の立ち居振る舞いの品位も問われる。今回のような暴行事件ではもちろん、品位を汚す行為ですら、朝青龍以前は厳しい姿勢で力士には臨み、とりわけ横綱には厳格だった。それが、なぜ、今日、このように協会の権威を揺るがすような事件が繰り返されるのか。

その原因は、外国人力士の扱い方に未熟だからではないのか。中学卒業後の入門しか許されなくなった現在の制度は、日本人力士を相対的にひ弱にしてしまった。日本人の人材不足を補うために人材を海外に求めた。伝統と文化に根差した国技たる相撲界に、その伝統的精神とは無縁に育った優秀な海外のレスラーが続々と日本に集まってきたのである。

まだ少数の時代には、外国生まれの力士を体力、精神ともに鍛えることができた。清めの塩を土俵に撒く意味、土俵入りは誰に対して礼を尽くすのか、土俵は日本独特の神聖な場所であること、等々。ところが、大量に外国人力士があふれてくると、日本の伝統的精神を理解させることまで手が回らない。優秀な指導者が不足する。日本人力士にすら十分に指導できない現在の状況では、外国人力士に「心技体」を理解してもらうには並大抵ではないだろう。それでも弱ければ聞く耳ももつ。強いと始末に悪い。

同じことは企業でも言える。とりわけ劣勢の挽回を急ぐ情報産業では注意が必要だ。外部の優秀な人材をスカウトして、企業の成長を戻すことは必要だが、その企業がもつ精神、人々から尊敬を集めて発展してきた企業家精神などを失ってはならない。「利益優先」で、儲けるビジネスマンが優秀な社員だと偏重すると、会社の中に「朝青龍」が育ちかねない。新卒を集めて崇高な会社精神を伝え、国際競争力をもつ大組織を築いてきたビジョナリ・カンパニーは多い。だが、今後は大量に経験者を採用する時代の到来である。技術の変化の激しい情報産業はとりわけ、経験者を外部から招き入れる人事戦略に出ざるをえないだろう。高い志の企業精神を正しく指導して、優秀な人材にこそ「心技体」を磨いてもらわなければならない。「あなたの会社の朝青龍」の出現を防がなければならないだろう。

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