J-CASTは本物のメディアになれるか

J-CASTは本物のメディアになれるか

これは、40歳以上のビジネスマンの方にお尋ねしたいが、J-CAST(ジェイ・キャスト)という会社をご存知だろうか。ネットに親しむ若者なら、ほとんどの人が知っているだろう。芸能スキャンダルやマスメディアの不祥事、政界の裏情報などのネタを、マスメディアやインターネットを観察する中から拾い出し、「ニュース」として新しい意味を持たせる。インターネットが生み出し新しい報道形態「ネットニュース」である。

問題は、「インターネットを利用している」というビジネスマンである。「知っている」というなら、インターネット社会の進展にまだ追いついている人だ。「知らない」と言ってがっかりすることもない。知らないのが普通かもしれない。しかし、知っておいたほうが良いと思う。それは現在起きている社会の変化の進行を実感する手掛かりになるはずだ。その変化は大規模な津波のようなものである。あらゆる産業社会、企業社会、社会組織に変化の津波は押し寄せているが、メディアにも及んできたということだ。

10年前に、J-CASTを創業した蜷川真夫氏が「ネットの炎上力」(文芸春秋社、文春新書)を刊行した。「炎上力」とは、何か違和感のあることがどこかのサイトやブログで掲示されると、ネット住民たちが一斉にそのサイトやブログなどに書き込みが集中して、機能がマヒするほどになることだ。「正義の声」になることもあれば、ただの「ネットの暴力」になることがあるが、いずれにしろ、すさまじいパワーをインターネットが持ち始めているということなのか。さっそく読んでみて、「ネットニュース」が与えた影響の一端を見ることができた。筆者は、J-CASTニュースの熱心な読者ではなかった。時々、人からJ-CASTニュースが何か、話題になっている、と聞いて、その存在を意識する程度だった。今回の著作で、これまでJ-CASTが活動してきたことの中身が理解できた。

蜷川真夫氏は、元朝日新聞記者、筆者と同業だった。その後、蜷川氏はAERAの創刊に携わった後、編集長を務めて、同誌のユニークなスタイルを作り上げた。そんな蜷川氏とは、共通の知人もたくさんいたが、現役時代には付き合いはなかった。知り合ったのはJ-CAST創立のころだった。放送はBroadcastだが、インターネットによる新しいメディアを作るということで「J」を頭につけて「J-CAST」と名前を付けた。当時の名刺には「代表取締役 編集長」とあった。その気概、思いをぶつけて、J-CASTニュースを発展させてきたのだと思う。

本書は新しいメディアであるインターネットがどのような変化を社会に引き起こしているか、を具体的に解説し、また、どのような変化を引き起こすか、それを予言するものと言える。一読をお勧めする。

これまでの掲載

中島情報文化研究所 > 執筆記録 > 内田洋行 奇論・暴論 > J-CASTは本物のメディアになれるか