28日の朝、目が覚めるとテレビでは緊急の気象庁の会見だった。27日午後から懸念していた津波の恐怖が現実になった。チリ沖地震はマグニチュードが8.6とも8.8とも伝えられている。海洋性の巨大地震である。チリ沖地震は50年前に三陸海岸に巨大な津波を襲来させた前歴がある。50年前はさらに巨大なマグニチュード9.5という壮烈なもので、観測史上最大の地震である。それに比べると、一回り小さいとはいえ、日本近海で起こる地震をはるかに上回る巨大さである。
ハワイを通過するときは波高1㍍程度だった。ウィキペディアによると、50年前には、ハワイのヒロ湾では10㍍の波高を記録したそうだが、筆者の当時の記憶では、ハワイの検潮装置では大した波高ではなく、それが日本の油断になったと、反省していたような気がする。地球の裏側で起きた津波は、途中では拡散して波高が低くなったものの、再び収れんしてきて波高が上がった、と言われた記憶がある。その点、今回の波高1㍍は、聞いたときに意外に大きいな、と感じた。
三陸一帯を中心に「大津波警報」が発せられたのは納得ゆくものだった。結果としては、波高3㍍を記録するような津波は来襲せず、大きな被害をもたらさずに終わって、ほっとしたが、日本列島の地底もいつ大地震が発生し、大津波が襲来してもおかしくない、不穏な状況である。リアリティをもって演習できた今回の「警報」は実に貴重なものだった。
ただ、今回は地球の裏側で起きたもので、津波が到達するには十分に時間的な余裕があった。日本近海で起こる大地震では、こんな余裕はないだろう。今回のようなペースではとても間に合わない。現在の地震観測システムでは、一定規模以上の地震発生とともに、震度が大きな地域には即時にアラームを発する仕組みが確立している。先日の沖縄近海地震では一部、震度5弱の地域に地震が到達する数秒前に警報が発せられたそうだが、次は津波だろう。地震波は速いので、警報はなかなか間に合わないが、津波はもう少し遅いので、有効ではないか。地震観測と同様の検知システムで、津波の襲来する可能性のある沿岸地域を判別して警報を発するのである。もちろん、発生してから警報を発するのは次善、三善の策である。本当は、もっと早くから地震の予兆を検知して、ほぼ正確に津波の有無まで予測することができれば最善である。
災害とは、人間と自然との「情報戦」である。センサーと情報処理技術。最近のはやりの「スマート」は、自然災害との戦いでもっと高度にしなければならないだろう。限られた条件の中で、気象庁の担当者は実によく頑張った。しかし、もっと予測の精度を上げるためにはもっと何が必要なのか、反省させられた。何が不足しているか、この過程ではっきりと分かってきたような気がする。