「IT」の不人気

「IT」の不人気

 若者の間には「IT企業」は人気がないそうだ。一時代前ならば間違いなく「IT企業」を名乗っていたはずのベンチャー企業が、苦心惨憺して単純な「IT企業」ではないことを説明しなくてはいけない時代である。

 最近、2人のベンチャー企業の創業者と会食した。低廉で取り扱いが簡単なSaaS方式のテレビ会議システム「nice to meet you」で話題のVキューブ社の間下直晃社長と小売店・飲食店向けの携帯販促ツールとして注目を集める「タッチャン」を売り出しているイポカ(ipoca)社の一之瀬卓社長である。

 Vキューブ社の「nice to meet you」は「貸し会議室」形式でどこからでも会議に参加させられるユニークなシステムでもちろん、「ITベンチャー」と呼んで少しも不思議はない。しかし、間下社長は「テレビ会議システムを提供する通信会社」と、あえて「通信サービス会社」を強調する。

 一方、イポカ社も、小売店・飲食店の店頭に置いた小型の簡易端末にフェリカ付きのケータイ端末を触れるだけでケータイのメールアドレスを店側で取得し、これを元に顧客への優遇サービスやイベントの告知など、顧客の来店を促進するさまざまな施策を打つ道具である。立派なCRMシステムの一種である。このイポカ社も「IT企業ではありません。IT活用企業です」と単なる「IT企業」ではないことを強調する。

 ひところもてはやされて株式公開した「ITベンチャー」の中で、その後、行き詰った企業が目立っている。安い給料で株式公開まで我慢した従業員たちも、公開した後、さっさと持ち株を売却して退社する例が目立ち、やる気のある人材で成り立ってきたベンチャーは内部が空洞化して、持続力を失った。あるいはビジネスモデルに無理があって、一時期に利益が出たように見えても、持続力ある収益構造には程遠かったものも多かった。おまけに、人使いは荒く、長時間労働、と来れば、人気のないのも当然である。

 本来ならば、その「IT企業」の悪いイメージを払しょくして、その信用を取り戻すのは、Vキューブ社やイポカ社などのように元気のよい「IT企業」の活動である。しかし、その両社がともに、なるべく「IT企業」の呼称を避けて通っているのだから、悪いイメージを払しょくする手立てはなかなか難しそうだ。

 呼び名はともあれ、IT社会を基盤にして、新しいサービスやビジネスモデルで成功する企業がもっと増えてくれば、IT業界にも人材が流入してきて、この産業の活性化につながるだろう。これらのベンチャーが堂々と「われらはITベンチャー」と叫べる時代に早く戻ってもらいたいものである。

これまでの掲載