自治体の企業誘致に関連して気になる動きが出てきた。クラウド時代の到来とともに注目を浴び始めた「コンテナ型データセンター」をめぐる特区指定の方針である。
「コンテナ型」は、従来のデータセンターのような冷房完備、粋を凝らした耐震構造のがっちりした建物を準備するのではなく、貨物輸送用のコンテナのような構造物にブレードサーバーを積み込む。トレーラーのような車両に搭載して移動可能な仕組みにもできる。多数のサーバーを仮想化して、共用する。いくつかのサーバーが故障しても、使用できるサーバーで補うのでシステム全体は影響を受けない。完全に運用しなければ気が済まない日本社会のメンタリティの改革を迫るものだが、クラウドの先駆者であるグーグルなどが、日本での実用化に熱心に取り組んでいる。
問題は、日本での規制。建築基準法や消防法などが障害になるという。そこで、建築基準法や消防法の適用を除外する特区を作って、日本でのコンテナ型データセンターを普及させようという方針が、総務省から明らかにされた。ただ、少し疑問がある。エアコンなどの冷却用の電力を節約できる北海道や青森県などの寒冷地域だけを特区として指定しようとしていることだ。
寒冷地は自然の冷気で冷却できる、というのだが、夏場の北海道は時には40度近い高温になる。また、冬場には零下に下がるので、今度は結露対策が必要になる。逆に、亜熱帯地域にある沖縄を考慮すると、夏場の最高気温は33度を超えることはない。海上を吹く海風で島全体が冷やされるからだ。自然の風で空冷ができる。どこまで安定しているかは別にして、適度にスコールのような冷たい雨も降る。冬場も摂氏10度を下回ることはめったになく、結露の懸念は全くない。寒冷地より亜熱帯が優れていると言い切るつもりはないが、最初の印象ほど、寒冷地と亜熱帯で優劣の差がない、と言いたいのである。
さらに、寒冷地は生活が厳しいので、メンテナンスの要員の居住環境、作業環境の問題や自然環境の厳しさによる電力供給、通信回線確保の問題など、他のデメリットもある。また、今後、通信需要の大量に発生するアジア地域には通信回線の距離が長くなるので、今後、高速通信需要が爆発してくると、利用分野は限定的になるかもしれない。
ということで、北海道や青森だけに限定せず、特区を希望する地域がほかにあれば、ぜひとも指定すべきだろう。コンテナ型センターはイコールで寒冷地というのは短絡的すぎる。他の可能性も考慮して、幅広く、特区での実験に門戸を開放してほしいものである。