デジタル社会の脆弱性を嘆きたくなるようなニュースがあった。ソニーが来年3月をめどにフロッピーディスクの生産、販売から撤退するそうだ。すでに日立マクセル、三菱化学メディアなどの他の大手メーカーも撤退しているという。米系のメーカーも撤退の意向で、フロッピー時代は幕を閉じる――とのんびり構えている場合ではない。筆者の本棚にはこれまでの活動記録となる重要なデータを収めたフロッピーディスクがたくさんある。すでに規格が変わる中で読み取れなくなっていたデータもあって、不安に思っていたが、いよいよその恐怖の現実が近付いている。
もちろん、フロッピーディスクの利用者がいなくなれば、データを読み書きする駆動装置も生産されなくなる。いや、すでにソニーはディスクの生産中止に先だって昨年秋に生産から撤退したそうだ。少量生産ではビジネスとして成り立たないから、当然の帰結である。
友人には、フロッピーのデータをCDにコピーし直した、という者もいるが、CDもいずれはDVDと競争できずに生産中止に追い込まれ、DVDもまた次の媒体にとって代わられるだろう。根本的な解決策にはならない。いずれにしろ、媒体の寿命が短すぎる。
記録の保存が義務付けられている官公庁や企業では、同様に、媒体を次々にコピーすることを考えたところもあるそうだが、コストがかかる割には有用性がないというので、媒体を追いかけるのを止めて、最近ではマイクロフィルムが注目されている。マイクロフィルムに写して保存し、必要になったら専用スキャナーで読みだして、その時期に主流となっている媒体にデジタルデータとして復元し、利用するということでこのリスクを回避する動きが広がっている。手間がかかることには変わりないが。個人では、さらに、大変である。マイクロフィルム利用、とまでコストをかける余裕はない。
そこで注目され始めたのがクラウドである。少し不安だが、ともかく、インターネットを利用して外部の専門事業者に保存してもらう。インターネットで申し込めば、パソコンのハードディスクのファイルを専用の巨大な記録装置にコピーしてくれるサービスである。デジカメの写真を保管するサービスもある。パスワードさえ教えれば、一定期間は他の仲間もアクセスできるので、写真を焼き付けて他の仲間に郵送するなどという面倒はなくなった。そのデジカメのデータの保存のようにパソコンのファイルの保管を低料金で請け負うサービス業者が多数、登場して来た。
便利そうだが、かなり不安を感じるのは継続性の保証の点だ。そのデータが本当に保管され続けるのか。サービス会社が倒産する、あるいは、事業を止めてしまうことはないのか。その時はどうするのか。また、情報漏えいの危険はないのか。保管場所も懸念がある。日本のように厳格な法制度の完備された国にデータが保管されているのか? という心配はあるものの、他の人が見ても価値がないような個人的データなので、そこは目をつぶることにするが、サービスの継続性が保証されないと、イマイチ、これで解決、とはいかない。
結局、紙に打ち出して保管しておく、ということが個人でできる、手軽な保存方法か。将来もスキャナーはあるだろうから、そこでデータに変換すれば良い。デジタル化、というのも、まだまだ、穴ぼこだらけである。