グーグルが風力発電所に投資する理由

グーグルが風力発電所に投資する理由

 グーグルが米国の風力発電所に対して日本円で約37億円の投資を行った、というニュースが流れている。情報産業の次のビジネスの巨大市場は「スマート社会」である。「スマート社会」は情報通信技術による社会の作り直しだが、人類的規模の根本的な社会改革である。グーグルの風力発電所への投資は、その新市場獲得競争が始まった号砲である。

 すでに太陽光発電や風力発電の技術開発ベンチャー企業への投資は行って、自然エネルギー開発を支援する方針はとってきたが、いよいよ、発電事業そのものへの投資である。膨大な情報処理を行う巨大なデータセンターは電力使用量も急速に膨らんでゆくが、グーグルの自然エネルギーへの関心は、その電力使用について炭酸ガスを排出しない自然エネルギーを多用することによって地球温暖化問題に対応する目的だと思われていた。

 しかし、事態はさらに進展している。地球環境問題に情報通信技術が重要な解決策を提供してくれるという点を確認しているうちに、社会システムの中にあるさまざまな非効率、不合理、無駄などもまた、情報通信技術によって解決策を提供できる、ということを思い出したのである。電力、エネルギーに関係して情報通信技術を連動させるのを「スマート・グリッド」と呼ぶのに対して、社会システムのさまざまな課題に情報通信技術を連動させるのをそれぞれ「スマート交通」「スマート教育」「スマート医療」あるいは「スマート社会」などと呼べる。巨視的な視点から情報通信技術をベースに、社会の仕組みを根本から作り換える、という「情報社会の夢」を再び正面に据えることができるようになった。

 グーグルがスマート・グリッドに熱心に取り組み始めるとともに、情報通信企業の先輩であるIBMが一歩先を行く、この「スマート社会」を唱え始めている。

 目先の企業経営の改革、企業の存続に目を奪われて、しばらく、こういう人類の将来を見据えた議論を忘れかけていたが、世の中は、われわれの停滞をしり目にして着実に前進している。目前の不況を取っ払って、早く、人類的なビジョンに取り組みたいものである。

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