クラウド利用の「グリーン自治体」の挑戦

クラウド利用の「グリーン自治体」の挑戦

 沖縄県宜野湾市といえば、移転問題を抱える米軍普天間基地の町だが、もう一つ、IT先進自治体としても有名である。鳩山前首相と丁々発止をした伊波洋一市長は琉球大学物理学科卒業後、地元の宜野湾市役所に就職、市の電算システム導入に携わった情報エンジニアでもある。宜野湾市は旧システムからの更新の際に主要システムを外部にアウトソーシングする「宜野湾モデル」を打ち出して全国自治体に話題を投げたが、その大胆な決断をしたのが伊波市長自身である。

 その宜野湾市が最近、実験したのが「クラウド」を利用したグリーンITの試みである。パソコンなどの情報機器の電源を遠隔監視して、不必要に電気が入っている機器の電源を強制的にオフにする、という実験である。途中経過で、詳しいデータの集計は近いうちにまとめられるが、参照している非監視の情報機器との比較では、おおよそ30%程度の省電力効果が出ているらしい。「グリーン自治体」への挑戦が始まりそうである。

 この情報機器の監視は外部の専門事業者がアウトソーシングで行うが、そのセンターはインターネットの向こう側、監視業務は実はクラウドの中のサーバーで管理するソフトウェアで自動的に行われている。クラウドが実際に情報機器使用の際の炭酸ガスの排出抑制に活用できる格好の事例である。もちろん、情報端末の電力使用量の削減は、同時に運用経費の削減でもある。歳出削減の効果が速攻で、目に見えて分かる仕組みである。

 このサービスを提供するのは、沖縄に設立されたばかりのベンチャーの「さびい社」だが、実験データを整理した上で、沖縄に限定せず、全国規模で自治体に提供するサービスとして商品化する方針のようだ。「クラウド」はただの言葉の遊びではなく、活きた革新の道具として着々と浸透しつつある。既存のシステムがクラウド化すると、情報サービス市場が縮小して行くのではないか、と危惧する情報産業の専門家もいるが、炭酸ガス排出の抑制などの新しい適用分野を開拓すれば、既存市場を侵食する懸念は全くない。新しいビジネス、新しいサービスにアレルギー反応を起こす方々にも、こうした新しい市場の開拓に関心をもっていただきたい。

 視野を広げて探せば、各地でクラウド利用の試みが進行しているのではないか。こうしたサービスを掘り起こして行けば、情報産業の出番はまだまだたくさんあるのではないか。その努力なしに、情報市場の収縮を嘆くのは、ただの怠慢ではないだろうか。

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