新聞報道によると、シャープは発電効率が世界最高の42.1%の太陽電池の開発に成功したそうだ。東京大学との協力の成果だ。2014年までに発電効率45%を目指すが、45%の水準になれば既存の系統電力の発電コスト並みになるという。発電効率向上については世界のメーカーで競争が続いているので、シャープを上回る成果の発表もあるかもしれないが、ここで感じるのは、技術革新は課題を認識すると加速して前進するという驚きである。
筆者が日本経済新聞記者時代、1980年代半ば、某社が発電効率10数%の太陽電池を開発した、というプレスリリースを右から左に記事に書き上げてファックスで本社のデスクに原稿を送信すると、折り返し、問い合わせの電話が来た。「本当か?」というので、もう一度リリースを確認してそれを告げると、「すごいニュースではないか」と興奮して電話を切った。出来上がった記事を紙面で見ると、太陽電池を取材した経験をもっていたデスクが加筆して一回り目立つものになっていた。
このデスクの知識は2、3年前のもので、その間の技術進歩も急だったので、当人が興奮したほどには画期的ではなくなっていたのだが、それはそれで、見る人が見れば、ニュース価値はあった。プレスリリースを右から左に流してゆけば良いものではなかったのは確かで、反省したものである。ただし、そこまで発電効率がよいのはものすごく高価だった。使途は宇宙に打ち上げる衛星の電源など、「コストは問わない」という用途しかなかった。ましてや、補助金で支えながらではあるが、家庭用電源や産業用の電源として実用化する時代が来るなど、なかなか想像できるものではなかった。それがしばらく目を離している間に、発電効率が40%を超えているのである。にわかには信じがたい。
太陽電池をはじめとした自然エネルギーに対しては、電力会社のトップの方々に聞くと、それほど熱意はなく、原子力にこだわっている。地球環境問題が深刻になって化石燃料からの転換が課題になると、さまざまなトラブルで停滞していた原発がにわかに復活の動きを取り戻している。技術が確立した原発に比べて、太陽光は「雨の日や夜には役立たない」など、欠点がある。しかし、その欠点も、発電効率向上の技術に加えて蓄電技術が進展すれば、「照っている時間だけでも需要を満たす」というレベルになるかもしれない。無駄のない発電や蓄電、あるいは外部への売却など、最適なコントロールのために、その背後に情報処理技術が控えているのはもちろんである。
日本は国際的に見て電力料金が割高で、これもサーバーの運用、データセンターが日本では競争力がないといわれる理由の一つだ。原子力も石油、石炭も日本には原料資源がないか、乏しい。しかし、太陽光や風ならば日本には十分にある。技術革新はその自然をエネルギーとして取り出すことを可能にする。技術革新をあきらめないこと、それは日本をあきらめないことである。それを感じさせるニュースだった。