低レベルの「失言」論争をいつまで続けるのか

低レベルの「失言」論争をいつまで続けるのか

 日本を取り巻く環境はまさに「内憂外患」である。内憂は構造不況である。産業の衰退に伴う単なる不況ではない。「空洞化」が深刻化して、通常の失業率ではなく、正規労働ベースで見て雇用機会の減少に伴う社会不安の拡大である。有効な経済対策を見つけられないまま、国会が混乱したままである。外患も深刻である。日本政府の決断力のなさを見越したように、中国が尖閣諸島に、ロシアが北方領土にと、それぞれけん制を仕掛けてきた。歴史に残る重大な事態である。

 それにもかかわらず、国会は何をやっているのか。お粗末な「国会答弁」を舐めた、緊張感のない法務大臣の発言である。仙谷官房長官の「自衛隊は・・・暴力装置」は、左翼運動の「業界用語」では警察も軍隊も「暴力装置」なので、どちらかと言えば左翼政権の民主党の閣僚から出た発言としては問題がないように見えるが、自衛隊は公式には軍隊でも警察でもないようなので、そこが問題ならば問題のような気がしたが、訂正発言によると、問題はそこではないらしい。いずれにしろ、揚げ足とりの類いだが、与野党が交代する前も同様の事があったので、初めて野党を経験する側にとっては興奮したくなる事態であるのは確かである。しかし、与野党とも、それを国会で論争するのは後回しである。

 確かに、「失言」はお粗末である。しかし、辞任に追い込むような本質的な話か、と思いたくなる。そんなことで鬼の首を取ったように辞任を要求し、時間を空費する、というのは全く、政治家としての自覚に欠けると言わざるを得ない。
特に、中国やロシアに対しては、単に政権与党の問題ではなく、国家の問題である。政治家として、国家として、中国やロシアに対して日本国民の意思を即刻、宣言すべきである。政府が弱腰なら、国会が決議して、相手国だけでなく、第三国にも日本の主張とその正当性を明示すべきである。国家の権威を問われる本質的な問題を後回しにして行われる国会議論、緊張感なく失言を起こす閣僚、いずれも、この国の陥った絶望的な現実を思い知らされる。

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